伊勢物語-第一段 降りくらし(伝 為氏本)

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

雨のいみじう降り暮して、つとめてもなほいみじう降るに、ある人のがりやりし、

和歌(1)

降りくらし降りくらしつる雨の音をつれなき人の心ともがな

 

返し、

和歌(2)

ややもすれば風にしたがふ雨の音を絶えぬ心にかけずもあらなむ

 

(現代訳)

雨が一日中ひどく降り続いて、早朝もやはりひどく降る時、ある人のもとに送った歌、

和歌(1)

一日中降り続く雨の音のように絶えることなく、つれないあなたが思い続けてくださるといいのですが

 

返し

和歌(2)

なにかにつけ風向きによって変わる雨の音を、一途に絶えることなくあなたへと向ける私の心を重ねないでください

和歌(1)を詠んだのは、女だろうか…男だろうか…

和歌(2)を詠んだのは、男だろうか…女だろうか…

 

断定できないが、いずれにせよ、双方が全く違う主張をしています。

 

わざわざ誤魔化す必要がない和歌(1)の言い分を信じるのなら、和歌(2)は口達者な者がその場しのぎで詠んだように感じてしまう…

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