伊勢物語-第四段 雲ゐの峰(伝 為氏本) 2022-02-27 WRITER 雨野やたしげ この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 (原文) (昔、西の院といふところに住む人ありけり。)その人市になむ出でたりける。 女車のありけるにいひつきにけり。 とかくをかしきことなむいひつきて、女「すみかはいづくぞ」といひければかくなむいひたりける。 和歌(5) わが家は雲ゐの峰に近ければ教ふとも来こむものならなくに 男、 和歌(6) かりそめにそむる心しまめならばなどか雲ゐをたづねざるべき といひて別れにけり。 (現代訳) 昔、西の院という所に住む男がいた。 その男が市に出掛けた。 女が乗る車があったので声を掛けた。 あれこれ興味のあることを話して、「どこにお住まいですか」と聞くと、女は、このように言ったのであった。 和歌(5) 私の家は、高くそびえ立つ峰がすぐ近くにあるくらいですので、お教えしてもおいでになることはできないでしょう。 男、 和歌(6) 軽い気持ちで声を掛けて始まった関係ですが、貴女に誠実な気持ちを抱いていますので、雲がかかるような空高い場所であっても貴女の家を訪ねないことがありましょうか…必ず訪ねますよ。 と言って別れたのであった。 西の院 京都の西院。 牛車に乗るほどのある程度身分の高いであろう女が、高くそびえ立つ峰に住んでいる…そして場所は京。 諸々を鑑みると、女の言葉を素直に受け止めるのは、ちょっと無理があります。 空高い峰のような手の届かない場所…つまり宮中の奥である後宮に住む意味と解釈する方が自然ですよね。 この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 前の記事 -Prev- 伊勢物語-第三段 かつ見る人(伝 為氏本) 次の記事 -Next- 伊勢物語-第五段 中空に(伝 為氏本) 関連記事 - Related Posts - 伊勢物語-第二十段 楓のもみぢ 伊勢物語-第三十七段 下紐 伊勢物語-第七十二段 大淀の松 伊勢物語-第六十三段 つくも髪 最新記事 - New Posts - 伊勢物語 あとがき 伊勢物語-第十八段 あきの夜も(伝 為氏本) 伊勢物語-第十七段 夢と知りせば(伝 為氏本) 伊勢物語-第十六段 太刀のをがはの(伝 為氏本)