日の本の屋根裏から日本を考える

伊勢物語-第十八段 白菊

 
伊勢物語







この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

(原文)

むかし、なま心ある女ありけり。

男近うありけり。

女、歌よむ人なりければ、心見むとて、菊の花のうつろへるを折りて、男のもとへやる。

和歌(30)

くれなゐににほふはいづら白雪の枝もとををに降るかとも見ゆ

男知らずよみによみける。

和歌(31)

くれなゐににほふが上の白菊は折りける人の袖かとも見ゆ

 

(現代訳)

昔、未熟でいい加減な風流な心を持つ女がいた。

男がその女の近くにいた。

女は歌を詠む人であったので、こころみようと、白菊の花が盛りを過ぎたものを折って、男のところへ歌とともに贈った。

和歌(30)

紅に色変わりしているのはどこでしょう。白雪が枝がたわむまで降り積もっているかのごとくただ真っ白に見えます。

男は歌の意味がわからないふりをして、歌を返した。

和歌(31)

紅に色変わりしている上の白菊とは、その枝を折った貴女の袖のかさねの色ではないですか。

  • なま心

中途半端に風流心があること。伊勢物語では「ひなび」と同じく、軽蔑の対象です。

 

  • 和歌(30)

雪がたわわに積もったように見えるほど真っ白な白菊だが、どこか紅に見える、つまり、男に対して何気ないようにしているが、本性は色好みなのでしょう。と女から積極的に誘いをかけています。

 

  • 和歌(31)

男は誘いをかけられているのは分かりながらも、所詮相手は、なま心の女。相手にしません。その紅はあなたの袖の色が映っているのでしょう。とさらっと返しつつ、女の袖の色を褒めています。

 

男(業平)の方が一枚も二枚も上手であり、非情に短い段ですが、このやりとりはなかなか面白いものです。

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