伊勢物語-第四十二段 誰が通ひ路 2020-06-14 2020-07-07 WRITER 雨野やたしげ この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 (原文) むかし、男、色好みと知る知る、女をあひいへりけり。 されど憎くはたあらざりけり。 しばしば行きけれど、なほいとうしろめたく、さりとて、行かではた得あるまじかりけり。 なほはた、えあらざりける仲なりければ、二日三日ばかりさはることありて、え行かでかくなむ、 和歌(79) 出でて来しあとだにいまだ変らじをたが通ひ路といまはなるらむ ものうたがはしさによめるなりけり。 (現代訳) 昔、男が、多情で気の多い女と知りつつその女と関係を交わした。 そうとは言いつつも、憎いという感じではなかった。 たびたび女のもとに通っていたが、やはり女の心変わりが心配で、もう関係をやめてしまおうかと思ったが、そうすることはできなかった。 なんと言っても、通って行かずにはおれない仲であったので、二日三日ほど差し支えがあり通って行くことができなかったので、男は次のように詠んだ。 和歌(79) あなたの家を出て帰ってきたわたしの足跡もいまだ変わらず残っていることでしょうが、今は誰が通っているのでしょうか。 なんとなく女を信じることができなくて、詠んだ歌である。 たびたびこの「色好みの女」が登場してきます。 男は、それでも愛想尽かす訳でもなく、嫉妬心がむくむくと・・・ 裏を返せば、それだけ魅力的であった女とも言えるのでしょう。 しかし、この和歌(79)は、なんとも女々しい情けない男の印象を想起させます。 この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 前の記事 -Prev- 伊勢物語-第四十一段 紫 次の記事 -Next- 伊勢物語-第四十三段 名のみ立つ 関連記事 - Related Posts - 伊勢物語-第百十四段 芹河行幸 伊勢物語-第九段 蒔きしなでしこ(伝 為氏本) 伊勢物語-第百二十二段 井出の玉水 伊勢物語-第二十六段 もろこし船 最新記事 - New Posts - 伊勢物語 あとがき 伊勢物語-第十八段 あきの夜も(伝 為氏本) 伊勢物語-第十七段 夢と知りせば(伝 為氏本) 伊勢物語-第十六段 太刀のをがはの(伝 為氏本)