伊勢物語-第七十九段 千尋あるかげ
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日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
(原文)
むかし、氏のなかに親王生れたまへりけり。
御産屋に、人々歌よみけり。
御祖父がたなりける翁のよめる、
和歌(142)
わが門に千尋あるかげをうゑつれば夏冬たれか隠れざるべき
これは貞数の親王、時の人、中将の人となむいひける。
兄の中納言行平のむすめの腹なり。
(現代訳)
昔、一族の中に親王がお生まれになった。
新生児の誕生を祝う御産屋の祝いに、人々が歌を詠んだ。
親王の外祖父側の老人が詠んだ、
和歌(142)
我が家の門に大きな陰を落とす大樹を植えたので、一門の誰もが夏も冬も、大樹の陰で隠れて恩恵を受けるであろう。
この皇子は、貞数親王である。
当時の人々は、中将の子であると噂した。
中将の兄の中納言行平の娘がお産みになった。
清和天皇第八皇子。
業平の兄である行平の娘・文子が清和天皇との間に親王を産みます。
一族にとって、久々の明るい話題に翁である業平がその喜びを歌にします。
和歌(142)の「大樹」は、この親王のことであり、一族がみなこの親王から色々と恩恵を受けることであろうと…在原氏の再興が叶うのではないか…そんな思いが込められています。
話には出てきませんが、残念ながら、貞数親王は、天皇の座につくことなく、在原氏の再興とはなりませんでした。
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