古事記を読む(194)中つ巻-第14代・仲哀天皇

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

仲哀ちゅうあい天皇の崩御

息長帯比売命おきながたらしひめのみことは、あるとき神がかりました。

仲哀ちゅうあい天皇が筑紫の訶志比宮かしひのみや熊曾くまそを討とうとなさったとき、

仲哀ちゅうあい天皇は、琴をお弾きになり、

建内宿禰たけしうちのすくね大臣おおおみは、神の言葉を求めました。

 

息長帯比売命おきながたらしひめのみことは、神託をお告げになりました。

「西の方に国がある。そこには、金銀を始めてとして、目の輝く様々な珍宝が多くある。わたしが、今から、その国を帰服させよう」

 

仲哀ちゅうあい天皇は、この神託を受けて、

「高いところに登ってみて、西の方角を見ても一向に国は見えず、ただ、大海があるだけだ」

と仰せになり、この神託は偽りであるとおぼし召し、琴を弾くのをやめて、静かにお座りになりました。

 

するとこの神は、ひどくお怒りになり、

「この天下は、おまえが治める国ではない。おまえは一道ひとみちに向かってしまえ」

と仰せになりました。

 

ここで、建内宿禰たけしうちのすくね大臣おおおみが、

「恐れながら、やはりその琴をお弾きください」

と申し上げると、

 

仲哀ちゅうあい天皇は、しぶしぶとその琴を引き寄せると、再び琴を弾き始めました。

しかし、しばらくすると琴の音が聞こえなくなり、火を灯して見てみると、すでに仲哀ちゅうあい天皇は、崩御されていました。

 

仲哀ちゅうあい天皇が神に呪い殺されるのを知ると、

建内宿禰たけしうちのすくね大臣おおおみらは、驚き恐れ、

仲哀ちゅうあい天皇の亡骸をもがりの宮に移しました。

 

そして、国中から神に捧げる供え物に使う品々を取り寄せました。

 

そして、

生剥いけはぎ(生きた獣の皮を剥ぐこと)、

逆剥さかはぎ(獣の皮を尻の方から剥ぐこと)、

阿離あはなち(田の畔を壊すこと)、

溝埋みぞうみ(田の溝を埋めること)、

屎戸くそへ(聖なる神殿に糞をして穢すこと)、

上通下通婚おやこたわけ(親子間の性交)、

馬婚うまたわけ(馬との性交)、

牛婚うしたわけ(牛との性交)、

鶏婚とりたわけ(鶏との性交)、

犬婚いぬたわけ(犬との性交)、

等の罪を集めて調べ、穢れを払う儀式を行いました。

 

また、建内宿禰たけしうちのすくね大臣おおおみが、祭場で神の言葉を受けました。

一道ひとみち死の国

もがりの宮:葬るまで亡骸を安置しておく場所

 

最高神天照大御神あまてらすおおみかみの子孫である天皇が、ある神の怒りを買い呪い殺されてしまいます。

この辺りは、あまりに天皇の命が軽く扱われています。

建内宿禰たけしうちのすくねに「琴を弾くように」注意もされています。

天皇が崩御すると、もがりの宮で葬るまで安置します。当然、腐り、白骨化しますが、その過程も定期的に見届けます。

そして、生剥いけはぎなど、文中の様々な罪を集め、まとめて穢れを祓います。

 

上記の罪は、見覚えがあると思います。

須佐之男命すさのおのみことが、天照大御神あまてらすおおみかみ誓約うけいを行い、

それに勝つと、嬉しさのあまり、

逆剥さかはぎ(獣の皮を尻の方から剥ぐこと)、

阿離あはなち(田の畔を壊すこと)、

溝埋みぞうみ(田の溝を埋めること)、

屎戸くそへ(聖なる神殿に糞をして穢すこと)、

を行いました。

参考:古事記を読む(31)上つ巻-天照大御神と須佐之男命

 

当時、田んぼは、命の源と言っても過言ではありません。

その田んぼを壊し、溝を埋めて水を通せなくすることは、大きな罪でした。

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