古事記を読む(223)下つ巻-第16代・仁徳天皇

 




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雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

かりの卵

ある時、天皇は豊楽とよのあかり(宮中での酒宴)を催そうと、日女島ひめしま(大阪市西淀川区姫島)に行かれたとき、その島の雁が卵を産みました。

 

それで建内宿禰命たけのうちのすくねのみことを呼び寄せて、雁が卵を産んだ様子を歌でお問いになりました。

和歌(64)

たまきはる 内の朝臣あそ 汝こそは 世の長人 そらみつ 倭の国に 雁卵 産むと聞くや

(内の大臣よ、あなたこそこの世に長く生きている人である。大和国で雁が卵を産むということを聞いたことがあるか)

 

これに対して、建内宿禰命たけのうちのすくねのみことは、歌で語りました。

和歌(65)

高光る 日の御子 諾しこそ 問ひたまへ まこそに 問ひたまへ 我れこそは 世の長人 そらみつ 倭の国に 雁卵産と 未だ聞かず

(日の御子よ。よく問うてくれました。本当によく問うてくれました。わたしこそは、この世を長く生きた者。大和国で雁が卵を産むなど、いまだに聞いたことがありません)

 

このように申し上げて、天皇から琴を貰い受けると、建内宿禰命たけのうちのすくねのみことは、また次の歌を詠みました。

和歌(66)

汝が御子や 終に知らむと 雁は産むらし

(わたしの御子よ。あなた様の世が永遠に続く吉兆として、雁が卵を産んだのでしょう)

 

これは、本岐歌ほきうたの片歌です。

本岐歌ほきうたの片歌:本岐歌ほきうたは、祝いの歌で、片歌は、もう1つの歌と対になって完成する歌です。

 

どうやら雁は、一般に、日本で越冬はするが日本で産卵することはないみたいです。

そんな雁が日本で卵を産むということは、縁起が良く吉兆の前触れだということ。

そして、

建内宿禰命たけのうちのすくねのみことが、長生きで物知りだという設定で話はすすんで行きますが、明らかにあり得ない。

建内宿禰命たけのうちのすくねのみことが、最初に登場したのが、第12代景行けいこう天皇のときであり、そこから、第13代成務せいむ天皇、第14代仲哀ちゅうあい天皇、第15代応神おうじん天皇ときて、第16代仁徳にんとく天皇ですから。

 

これをもって、建内宿禰命たけのうちのすくねのみことが架空の実在しなかった人物というのは、あまりに早計ですが、明らかに物理的な矛盾が生じています。

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