古事記を読む(232)下つ巻-第19代・允恭天皇 2019-04-21 WRITER 雨野やたしげ この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 軽太子かるのひつぎのみこと軽大郎女かるのおおいらつめ 允恭いんぎょう天皇のあとは、木梨軽太子きなしのかるのひつぎのみこが皇位を受け継ぐことになっていました。 木梨軽太子きなしのかるのひつぎのみこは、即位する前に同母妹いろもの軽大郎女かるのおおいらつめとの禁断の愛を結び、次の歌をお詠みになりました。 和歌(71) あしひきの 山田を作り 山高み 下樋したびを走せ 下どひに 我がとふ妹を 下泣きに 我が泣く妻を 今夜こそは 安く肌触れ (山に田を作り、山の高いところに水路を走らせるように、こっそりとわたしは、妹を求めている。わたしの慕い泣く妻に今夜こそは心安らかにその肌に触れたかったものを) これは志良宜歌しらげうたです。 また、次の歌をお詠みになりました。 和歌(72) 笹葉に 打つ霰あられの たしだしに 率寝てむ後は 人は離ゆとも 愛しと さ寝しさ寝ねてば 刈薦の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば (笹の葉を打つ霰あられが、たしだしと音を立てるように、確かに共寝をした後は、その人が離れて行こうとも愛しいものです。そうしたくて共寝をしたのならば、離れ離れになっても愛しいものです。共寝したのならば) これは、夷振之上歌いなぶりのあげうたです。 百官もものつかさ(多くの官僚・役人)と天下の人たちは、軽太子かるのひつぎのみこに背いて穴穂御子あなほのみこに期待をするようになりました。 すると、軽太子かるのひつぎのみこは、恐れて大前小前宿禰大臣おおまえおまえのすくねのおおおみの家に逃げ入って、武器を備え作りました。 そのときに作った矢は、銅の矢尻を使っていました。そこで、その矢を軽箭かるやといいます。 穴穂御子あなほのみこもまた武器を作りました。 この王子みこが作った矢は、現在使っている鉄の矢です。 これを穴穂箭あなほやといいます。 志良宜歌しらげうた:終句を尻上がりに詠む歌。 夷振之上歌いなぶりのあげうた:調子を上げて詠む歌。 古代日本では母親が違う妹との結婚は、よくありましたが、同母妹いろも、つまり、現代風に言えば、母親が同じ実の妹との結婚は、さすがに御法度で、周りはどん引きして、一気に信頼をなくし、大事件になったという話です。 この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 前の記事 -Prev- 古事記を読む(231)下つ巻-第19代・允恭天皇 次の記事 -Next- 古事記を読む(233)下つ巻-第19代・允恭天皇 関連記事 - Related Posts - 古事記を読む(257)下つ巻-第23代・顕宗天皇 古事記を読む(87)上つ巻-国譲り 古事記を読む(196)中つ巻-第14代・仲哀天皇 古事記を読む(7)上つ巻-伊邪那岐神と伊邪那美神 最新記事 - New Posts - 伊勢物語 あとがき 伊勢物語-第十八段 あきの夜も(伝 為氏本) 伊勢物語-第十七段 夢と知りせば(伝 為氏本) 伊勢物語-第十六段 太刀のをがはの(伝 為氏本)