日の本の屋根裏から日本を考える

古事記を読む(247)下つ巻-第21代・雄略天皇

 







この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

三重の采女うねめ

天皇が、長谷はつせのよく茂ったけやきの下で豊楽とよのあかり(酒宴)を催しなされたとき、伊勢国いせのくにの三重の采女うねめ(地方豪族出身で、朝廷に仕える少女)が大御盞おおみさかずきを献上しました。

 

すると、そのよく茂ったけやきの葉が落ちて大御盞おおみさかずきに浮かんでいることに気付かず、その采女うねめが、大御酒おおみきを献上しました。

 

天皇が盃に浮かんだその葉をご覧になると、その采女うねめを打ち伏せ、首に太刀を当てて、切ろうとするとき、その采女うねめが、天皇に申し上げました。

「わたしを殺さないでください。申し上げたいことがございます」

 

そして、次の歌を詠みました。

和歌(92)
纏向まきむくの 日代宮ひしろのみやは 朝日の 日照る宮 夕日の 日がける宮 竹の根の ねだる宮 木の根の 根延ふ宮 八百土よし い築きの宮 真木さく 檜の御門 新嘗屋に 生ひ立てる 百足る 槻が枝は 上枝は 天を覆へり 中枝は 東を覆へり  下枝は ひなを覆へり 上枝の 枝の末葉は 中枝に 落ち触らばへ 中枝の 枝の末葉は 下枝に 落ち触らばへ 下枝の 枝の末葉は あり衣の 三重の子が 捧がせる 瑞玉盞に 浮きし脂 落ちなづさひ  水こをろこをろに 是しも あやに畏し 高光る 日の御子 事の 語り言も 是をば

纏向まきむく日代宮ひしろのみやは、朝日の照る宮、夕日が照り輝く宮、竹の根がはびこる宮、木の根が張っている固く築いた宮です。檜造りの門があり、新嘗祭にいなめさいの御殿に茂っている、たくさんの葉が茂ったけやきの枝は、上の枝は天を覆い、中の枝は東の国を覆い、下の枝はひなを覆っています。上の枝の枝先は中の枝に落ちて触れ、中の枝の枝先は下の枝に落ちて触れ、下枝の枝先は、三重の女が捧げた酒杯に、浮いた脂のように落ちて浮かび、水をこおろ、こおろとしております。このことは、誠に畏れ多いことであります。日の御子にこのことを語ってお伝えいたします)

 

この歌を献上したので、天皇は、その罪をお許しになりました。

和歌(92):水を「こおろ、こおろ」としてかき回すのは、淤能碁呂島おのごろじまが誕生したときと同じです。

参考:古事記を読む(3)上つ巻-伊邪那岐神いざなきのかみ伊邪那美神いざなみのかみ

この伊邪那岐神いざなきのかみ伊邪那美神いざなみのかみによる日本創造の表現を使用して、「浮かんだ葉っぱ」という失敗を見事に神聖なプラスの表現へと変換しました。そして、伊邪那岐神いざなきのかみの流れをくむ「日の御子」を称賛しています。

 

この機転で天皇の怒りを収めることができました。

この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。




Copyright© 深夜営業ジャパノロジ堂 , 2019 All Rights Reserved.