古事記を読む(255)下つ巻-第23代・顕宗天皇 2019-05-27 WRITER 雨野やたしげ この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 市辺忍歯王いちのべのおしはのみこの御骨みかばね 顕宗けんぞう天皇は、お戻りになると、その老媼おみなをお呼びになり、御骨みかばねが埋められた場所を忘れずに、またその正確な地を覚えていたことを誉め、名を賜い置目老媼おきめのおみなと名付け、さらに宮殿に召し入れて、手厚くもてなしました。 そして、その老媼おみなの住む家を宮殿の近くに作り、毎日、必ずお呼びになりました。 鐸ぬりて(釣り鐘のような大きな鈴)を宮殿の戸に掛けて、その老媼おみなをお呼びになりたいときは、必ずその鐸ぬりてを引き鳴らしました。 そして、天皇は、次の歌をお詠みになりました。 和歌(103) 浅茅原 小谷を過ぎて 百伝う 鐸ぬりてゆらくも 置目来らしも (茅の低い高原や小さな谷を過ぎて、鐸ぬりてを揺らし響かせれば、置目が来るだろう) やがて、置目老媼おきめのおみなは、 「わたしは、とても老いてしまいました。故郷に退こうと思います」 と申し上げました。 そして、申し出のとおりに故郷に退くとき、天皇がお見送りになり、次の歌をお詠みになりました。 和歌(104) 置目もや 淡海の置目 明日よりは み山隠りて 見えずかもあらむ (置目よ。近江の置目。明日からは、山に隠れてしまって見えなくなるのだろうか) 顕宗けんぞう天皇は、父の御骨みかばねが埋められた場所を覚えていた老媼おみなを置目老媼おきめのおみなと名付け、厚遇します。 置目おきめというのは、よく目で見て覚えていたというニュアンスが含意されているのでしょうが、そのままのネーミングです。 この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 前の記事 -Prev- 古事記を読む(254)下つ巻-第23代・顕宗天皇 次の記事 -Next- 古事記を読む(256)下つ巻-第23代・顕宗天皇 関連記事 - Related Posts - 古事記を読む(187)中つ巻-第12代・景行天皇 古事記を読む(121)中つ巻-初代・神武天皇 古事記を読む(172)中つ巻-第11代・垂仁天皇 古事記を読む(161)中つ巻-第11代・垂仁天皇 最新記事 - New Posts - 伊勢物語 あとがき 伊勢物語-第十八段 あきの夜も(伝 為氏本) 伊勢物語-第十七段 夢と知りせば(伝 為氏本) 伊勢物語-第十六段 太刀のをがはの(伝 為氏本)