洗礼と父親降臨と大激怒、それすなわち奇譚なり

クリスマスも終わりですね。
今年のこの3連休は、忘年会も重なって、なんだか呑み続けていました。
若い頃は、
「日本人ならキリストの誕生日のクリスマスより、お釈迦様の誕生日の花祭り(4月8日)を祝いやがれ」
と暴論を吐いたこともありました・・・
ごめんなさい。
しかし、当時それを言っていたわたしは、形式上?は、クリスチャンだったのです。
よいつかみだ・・・
20代前半の頃、東京に住んでいたことがありました。
12月の雪がちらつく寒い日、1人で街を歩いていると、男女2人に声を掛けられました。
男性は、まだ30代と若く、女性は、60代くらいのとても優しい笑顔が印象的な2人でした。
「近くに教会があるのですが、そこでお話を聞いてくれませんか?」
今なら間違いなく丁重にお断りする案件だが、その頃は、まだ若く妙なテンションと好奇心で、
「行きましょう」
と答えました。
「ハレルヤ」と祈りなさい♪
教会に着くと、その60代の女性がすぐに温かい飲み物を持ってきてくれて、それを飲みながら、話を聞いていました。
30代の男性は、奥に下がり、その女性に家族のことを含め、色々と訊かれ、話をしていました。
そして、この時点で、今回の悲劇の元凶になる勘違いが生じていました。
この女性は、話の流れの行き違いでわたしの父親がもう亡くなっているものと勘違いして受け止めてしまいました(今でも健在です・・・)。
そして、
お父さんのためにお祈りしましょう
60代の女性
このときは、わたし自身はまだ、勘違いされていることに気付いていません・・・
ハレルヤと祈りましょう
60代の女性
若い頃、わたしは、非日常を妙なテンションで楽しむ悪いクセがありました・・・
良く言えば、怖い物知らず、悪く言えばバカ・・・
今じゃ、すっかり良くも悪くもその気質は、影を潜めてしまいました。
話を戻すと、
ここまで、来たらとことん付き合おう・・・
そう心を決めたわたしは、
「ハレルヤ♪」
と言いました。
はい、何度も続けて
60代の女性
「ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ」
はい、もっと早く
60代の女性
「ハレルヤハレルヤハレルヤハレルヤハレルヤ・・・」
はい、こうして祈り続けていると、言い淀むときが来ます。それが、お父さんが降りてきた合図です
60代の女性
このときになって、勘違いされていることに気付きました。
と同時に、
(そら早口で言い続けたら、いつか、つまるやろ・・・)
関西人として当然のツッコミを頭の中でツッコんだら、笑いが込み上げ、つまってしまいました。
「ハレルヤハレルヤハレルヤ・・・レル・・・レルヤ・・・」
はい!!!お父さんが降りられました
60代の女性
(えー!!!!!)
言うべきか・・・言わざるべきか・・・
しかし、ここで言ったら、降りるはずのない父親を降ろしたこの人のばつが悪過ぎる・・・
言えない・・・
白装束に着替えなさい
奥に白装束を用意していますので、着替えてください
60代の女性
この時点で、あまりに展開が早すぎ、多少焦るも、クセ発動で好奇心が勝ち、
「分かりました」
下着まで全てを脱ぎ、そのぺらっぺらっの白装束に着替えると、裸足で教会の外に連れて行かれました。
雪がちらつき、盛大な寒さ・・・
教会の建物沿いを行くと、教会の裏にあたるところに数メートル四方のすずりのような形をしたものに水が入っていました。
すずりの土手の部分に正座させられ、横で60代の女性がぶつぶつと祈りを唱えていました。
体を清めなさい
この時点で寒さでガタガタ震えていました。
つい数時間前は、街を歩いていただけなのに、この急激な展開・・・
この時点で好奇心を不安が上回りましたが、もう引けません。
その女性が祈り終えると、わたしの頭を持ち、水の中に2回押し込みました。
「ぎょえぇぇぇぇぇーー」
さらに、全身に水を掛けられ、
「はぁはぁぁぁぁぁーー」
そして、またぶつぶつとお祈り・・・
はい終わりです。寒かったですね
60代の女性
何これ!?!?
あの~父親は生きてます
タオルを借していただき、ガタガタ震えながら、自分の服に着替えました。
そして、再び最初の部屋に戻り、話を聞きました。
ここで、わたしは、ようやく「洗礼」を受けたことに気付きました。
今思えば、あまりの無知さに笑いが出ますが・・・
そして、
お父さんも先ほど降りられてから喜んでおられます
60代の女性
・・・
・・・
・・・
今思えば、これも言う必要があったのかも疑問ですが、クセ発動?どうしても言いたくなり・・・
「あのぉぉぉぉ・・・父親は生きてます・・・」
えっ
60代の女性
・・・
・・・
・・・
えっと、正直なところ、ここの会話は今思い出しても思い出せないのです。
30年前のことも詳細に覚えているほど、記憶力はいいのですが、本当に思い出せないのです。
その剣幕が衝撃的過ぎて・・・??
ただ1つ言えることは、めちゃくちゃ怒られたということです・・・
わたしからしたら、父親はまだ健在であり、そんなこと言う訳もなく・・・
そして、「帰りなさい」と・・・
そして、帰りました・・・笑
何でしょう・・・この疲労感・・・
さいごに
この話を知り合いのクリスチャンの方にしたことがあります。
爆笑されながら、「確かにキリスト系やけど・・・う~ん通常そんなことあり得ないけど、あり得るといえばあり得るかも・・・」と言われました。
その真意は、その強烈な女性の個性は抜きにして、細かく言えばキリがないけど大まかなところは、あり得るかもということでした。
その後、キリスト教を信仰することもなく、なんだか意味の分からない「洗礼を浴びた」という事実だけが残りました。
むしろ、日本人ですから、神道と仏教にやはり親しみがあります。
洗礼を浴びたのだから、おまえはクリスチャンだと言われても、それはそれで構いません。
信仰は、心ですからね・・・
そこの形式に別段のこだわりはありません。
たまにあのときの会話を詳細に思い出そうとするのですが、本当に思い出せないのです。
シンプルに「そもそも、そんなに簡単に洗礼てするもん?そもそも、同意したのか?」とかね・・・笑
クリスマスになると思い出すクセ発動満開の若気の至りであります。