伊勢物語-第三段 ひじき藻
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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。
日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
(原文)
むかし、男ありけり。
懸想じける女のもとに、ひじき藻といふものをやるとて、
和歌(4)
思ひあらば 葎の宿に ねもしなむ ひじきのものには 袖をしつつも
二条の后の、まだ帝にも仕うまつり給はで、ただ人にておはしましける時のことなり。
(現代訳)
昔、男がいた。
思いをかけている女のもとに、「ひじき藻」というものを贈るというので、次の歌を送った。
和歌(4)
もしあなたにわたしを思う心があるのならば、葎(雑草)の生い茂る宿に共寝をしましょう。敷物には衣の袖を敷いて。
これは、二条の后(藤原高子)が、
まだ清和天皇にお仕えする前の、臣下の身分でいらっしゃったときのことである。
語感の通り、現在でいう「ひじき」です。
平安時代ですので、海のない京では貴重品としての扱いになります。
早速出ました。
伊勢物語の女主人公「藤原高子」。
原文「二条の后の、まだ帝にも仕うまつり給はで、ただ人にておはしましける時のことなり」は、後の時代に付記されたというのが定説です。
藤原高子は、藤原長良の娘であり、いずれ清和天皇の后とするべく藤原家にとって大切な大切な存在。
その高子に対して、いわば藤原氏との権力抗争に敗れ臣籍に下った在原業平がちょっかいを出しているという図式。
臣籍降下
皇族がその身分を離籍し、姓を与えられ臣下に入る事。
2人の年齢差は、業平が17歳上であり、高子がまだ清和天皇の后となる前なので、10代と考えると、業平の方は、油の乗り切った30代。
片や深窓のお嬢様、片や平安のプレイボーイの百戦錬磨の和歌の名手・・・
業平にすれば、接点さえ見出せれば、「落とす」ことなどワケないことでしょうが、
なんせ深窓のお嬢様ですから、高子周辺はガチガチのガード状態。
また、高子は、容姿が大変優れていたという記述があり、
業平は、その容姿に惚れたのか、はたまた権力抗争に敗れた
私怨の末に藤原氏への復讐として、
高子に手を出したのかは、不明ですが、
業平と
高子の恋仲は、当時の人にとって、恐らくスリリングで男の憧れでもあり、絶好のゴシップネタだったのかもしれません。
次の第四段は、伊勢物語でも中核を占める段の1つだと思いますが、業平の高子への思いが溢れ出ます。
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