「天皇」とは何者であり、日本国の「象徴」となり得る根拠は何か?

わたしには、まったく関係ないのであるがゴールデンウィークに入った。
「昭和の日」、「憲法記念日」、「みどりの日」、「こどもの日」。
よい機会でタイムリーなので、まず、4月29日「昭和の日」と5月3日「憲法記念日」について考えると、
「昭和の日」は、昭和天皇の誕生日であり、
「憲法記念日」は、日本国憲法の施行を記念して設けられた祝日である。
憲法における天皇
「天皇」と「憲法」は、「日本」を考える上で外すことはできない。
まず憲法において天皇は、「前文」のあとの第1章に、
「第1章」
第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
とされている。
これを素直に読み解くと、
「天皇」が「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である」ことは、「日本国民の総意」である。
そんな同意をした覚えはないという方ももちろんおられるであろうが、それは今は置いておき、
いきなりど頭の第1章の第1条から、
「天皇は、~」
と当たり前のように書かれて、さらに、
「象徴であつて」
とされているが、
そもそも、
「「天皇」とはどこから来て(何者であり)、日本国の「象徴」となり得る根拠は何か?」
という疑問がわいてこないであろうか?
仕事上、特許やそれに関する訴訟関連の裁判資料などの法律文書を扱うことも多く、
認識が難しい誤解を生みかねない初出の事柄には、必ず定義付けをする
ものである。
例えば、内閣総理大臣は、
天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する(第6条)
天皇が任命するとされる、「内閣総理大臣」は、
国会議員の中から国会の議決でこれを指名する(第67条)
ん?国会議員?
国会議員については、
両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
両議院の議員の定数は、法律でこれを定める(第43条)
とされている。
このように憲法かつ/又はその下の法律で網羅的に定義付けされているものである。
話を戻して、
結局、何が言いたいのかというと、
「皇室典範」という法律もあるが、
「天皇」自体の定義付けが憲法又は法律でされていない
ということである。
「天皇」自体の定義付け:「天皇」とはどこから来た(何者である)のか?
憲法を読むと、
象徴であることは分かった。
しかし、
そもそもの大前提である、
「「天皇」とはどこから来た(何者である)のか?」
と
「天皇が日本国の「象徴」となり得る根拠は何か?」
この疑問は解決されない。
この疑問を紐解いていくと神々の時代までさかのぼる。
なんかファンタジーな胡散臭い話になってきましたが・・・(笑)
しかし、125代続き、2000年以上に及ぶ皇位継承の初代まで行くと、もちろん文字はなく明確な記録なんてものは存在していない。
それを読み解く手がかりが、日本最古の書「古事記」、「日本書紀」である。
今上天皇が天皇であるのは、昭和天皇から皇位を継承したからである。
昭和天皇は大正天皇、大正天皇は明治天皇・・・
これをずっと125代さかのぼって行くと初代天皇神武天皇まで行く着く。
問題はこの先である。
古事記を読むと、
神武天皇の父親は、鵜草葺不合命であり、その父親は、火遠理命(一般的には、山幸彦)であり、
その父親は、邇邇芸命である。
邇邇芸命は、天照大御神の孫であり、
天照大御神は、
最初、葦原中国(地上世界:日本)を統治する命を息子である天之忍穂耳命に授ける。
しかし、天之忍穂耳命は、自分の息子である邇邇芸命の方が良いのではと進言する。
結局、天照大御神の孫にあたる邇邇芸命が、
葦原中国(地上世界:日本)を統治するべく、高天原(神々が住む天上世界)から宮崎県の高千穂へ天孫降臨をする。天孫降臨とは、天照大御神の孫が地上世界へ降臨するという意味で、いわゆる官僚の天下りの「天下り」もここから来ている。
話を戻すと、
その天照大御神の孫である邇邇芸命の血統が、現在の天皇家へと連綿と繋がっていく。
天照大御神が皇室の祖神であるといわれる所以がここにある。
厳密には、さらにさかのぼることができ、天照大御神の父親は、伊邪那岐神である。
伊邪那岐神は、古事記では自然発生的に「成った」神であり、その先にはさかのぼることができない。
成る
いわゆる物理的な男女のまぐわいによってではなく、自然発生的に生まれた場合、
「成る」を使用する。
「「天皇」とはどこから来た(何者である)のか?」の疑問は、以上のことから解決し、
改めて言うこともないが、日本列島をつくった伊邪那岐神、その娘である天照大御神の系譜を継ぐのが天皇家である。
地上に降りた邇邇芸命の結婚をきっかけに、
本来寿命をもたない神に寿命が設定され、
グラデーションのように「神」が「神と人」の性質を備えるようになり、やがて「人」になった系譜ということができる。
戦前、「現人神」と言われた所以がここにあり、あくまで「現人神」とは、神ではなく、神のような性質を備えた人である。
「天皇」自体の定義付け:日本国の「象徴」となり得る根拠は何か?
この疑問も古事記を読み解けば自ずと分かる。
皇室の祖神天照大御神の父親である伊邪那岐神は、
天つ神(日本の神々)から天の沼矛を渡され、
「この漂ってる国を固めて完成させなさい」
という命を受け、
伊邪那美神と2人で葦原中国(地上世界:日本)をつくっていく。
そして、伊邪那岐神は、子である天照大御神にその統治を命じる。
天照大御神は、高天原(神々が住む天上世界)をすでに統治しており、
その孫である邇邇芸命に葦原中国(地上世界:日本)の統治を命じる。
つまり、古事記を読む上では、
天つ神(日本の神々)
↓
伊邪那岐神
↓
天照大御神
↓
邇邇芸命
↓
火遠理命(一般的には、山幸彦)
↓
鵜草葺不合命
↓
神倭伊波礼毘古命(のちの神武天皇)
と正当性をもった血統の根拠に基づく命が続くのが分かる。
本来であれば、邇邇芸命が初代天皇となるべきなのであろうが、
日本全国の統治に4代を費やし、
神倭伊波礼毘古命の代でようやく全国統治が行われ、神倭伊波礼毘古命が初代天皇となり、
神武天皇として即位したということである。
古事記を読み解いた以上のことから、
「天皇が日本国の「象徴」となり得る根拠は何か?」
という疑問は、そもそもの
「天つ神(日本の神々)」のご意思
に基づいたものである。
ということになるのだろうと思う。
まとめ
古事記が教育の現場から失われて久しい。
建国の歴史を学び、そのアイデンティティを知るというのは、その民族にとって極めて大切なことだと思っている。
まして、日本の場合は、「現存する最古の国の、建国の歴史」である。
世界で類を見ない奇跡の「万世一系」を2000年以上も続けている
ある意味どうかしている国である。
それを知る上で「古事記」は、まさに最善の書である。