伊勢物語-第百五段 白露

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男「かくては死ぬべし」といひやりたりければ、女、

和歌(181)

白露は消なば消ななむ消えずとて玉にぬくべき人もあらじを

 

といへりければ、いとなめしと思ひけれど、心ざしはいやまさりけり。

 

(現代訳)

昔、ある男が「このまま冷淡にされる状態ならば、私は死んでしまうでしょう」と言ったところ、女は、

和歌(181)

白露が消えてしまうのならば、消えてしまっても構いません。白露を飾り玉として緒を通す人などいないのと同様に、貴方と親しくなる女性なんていないのでしょうから。

 

と言ったところ、たいそう失礼だと思ったが、女を思う男の気持ちは、ますます強くなった。

別段、ややこしい話でもないですが、男が歌を詠まないという意味では、伊勢物語では珍しい段かもしれません。

 

はて、この段は、何が言いたかったのか…

 

失礼な言動で突き放されて、憎しみがわく反面、表裏一体に愛情もわいてくる…そんな男女間の不思議な心情は、今も昔もこれからも変わらない普遍的なものなのかもしれません。

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