伊勢物語-第八十段 おとろえたる家
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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。
日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
(原文)
むかし、おとろえたる家に、藤の花植ゑたる人ありけり。
三月のつごもりに、その日、雨そほふるに、人のもとへ折りて奉らすとてよめる。
和歌(143)
濡れつつぞしひて折りつる年の内に春はいく日もあらじと思へば
(現代訳)
昔、衰えて落ちぶれた家に、藤の花を植えた人がいた。
三月の末に、雨がしょぼしょぼと降っていたその日、人のもとに藤を折って送るということで詠んだ、
和歌(143)
雨に濡れながら無理に藤の花を折りました。今年の内は、春は幾日もないと思いましたので。
衰えて落ちぶれた家の人が、藤の花が一番綺麗な晩春から初夏、さらに藤の花を風情に魅せる雨の日に、
今年の内に春は幾日もないと思い、雨に濡れる事も厭わず自ら手折って、ある人に贈ったという話です。
しかし、「おとろえたる家」を業平の在原家とみるのなら、「藤の花」は「藤原氏」を連想させ、
片や「おとろえたる家(在原家)」、片や「栄華を謳歌する家(藤原家)」…
業平のおもねりという穿った曲解も想起させる。
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