伊勢物語-第百十五段 都島

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、陸奥みちの国にて、男女すみけり。

 

男、「みやこへいなむ」といふ。

 

この女、いとかなしうて、うまのはなむけをだにせむとて、おきのゐて都島といふ所にて、酒飲ませてよめる。

和歌(196)

おきのゐて身を焼くよりも悲しきはみやこしまべの別れなりけり

 

(現代訳)

昔、陸奥の国で男女が一緒に住んでいた。

 

男が「都へ帰ろうと思う」と言う。

 

この女は、とても悲しくて、送別の宴をせめてしようと、遠い海岸の都島という所で、男に酒を飲ませて詠んだ。

和歌(196)

赤く焼けた炭火が体について、身を焼くよりも悲しいことは、この都島の辺りで都に戻る貴方との別れですよ。

昔は、地方に赴任してその現地で結婚したとしても、任期が終わり都へ帰るときは、現地妻はそのままその土地に置いてゆくのが習慣であり、

こうした別れ話は、多々目にすることがあります。

 

光源氏と明石の君もこの例ですよね。

 

そして、男の返歌も無く、残される女のことを思うと少し悲しい気持ちになりますが、こうした別れは当時は各地で日常的に繰り返されていた訳です。

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