伊勢物語-第十二段 盗人

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男ありけり。

 

人のむすめを盗みて、武蔵野へて行くほどに、ぬすびとなりければ、国の守にからめられにけり。

 

女をば草むらのなかにおきて逃げにけり。

 

道来る人、「この野はぬすびとあなり」とて、火つけむとす。

 

女わびて、

和歌(17)

武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれりわれもこもれり

 

とよみけるを聞きて、女をばとりて、ともにていにけり。

 

(現代訳)

昔、男がいた。

 

ある人の娘を盗み奪って、武蔵野へ連れて行ったところ、盗人であるので国守に捕まってしまった。

 

男は、女を草むらの中に置いて逃げたのであった。

 

男のあとを追ってきた人が「この野には、盗人が隠れている」と、火をつけようとする。

 

女は、困り悲しんで、

和歌(17)

武蔵野は今日は焼かないでください。愛しい夫も隠れていますし、わたしも隠れています。

 

と詠んだのを聞いて、女を取り戻して男と一緒に連れて行ってしまったのであった。

  • ある人の娘を盗み奪って

相思相愛の男女が駆け落ちのようなことをして、それを親が追ってきたというのが自然の解釈かと思います。

 

男は、女をおいて逃げてしまったのではなく、一旦草むらに隠して、あとで再び一緒になるということだと思います。

  • 和歌(17)

「な~そ」は禁止。

 

女が詠んでますので、ここでは「つま」は夫。

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