伊勢物語-第十二段 盗人 2019-09-10 2020-07-07 WRITER 雨野やたしげ この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 (原文) むかし、男ありけり。 人のむすめを盗みて、武蔵野へ率ゐて行くほどに、ぬすびとなりければ、国の守にからめられにけり。 女をば草むらのなかにおきて逃げにけり。 道来る人、「この野はぬすびとあなり」とて、火つけむとす。 女わびて、 和歌(17) 武蔵野はけふはな焼きそ若草のつまもこもれりわれもこもれり とよみけるを聞きて、女をばとりて、ともに率ゐていにけり。 (現代訳) 昔、男がいた。 ある人の娘を盗み奪って、武蔵野へ連れて行ったところ、盗人であるので国守に捕まってしまった。 男は、女を草むらの中に置いて逃げたのであった。 男のあとを追ってきた人が「この野には、盗人が隠れている」と、火をつけようとする。 女は、困り悲しんで、 和歌(17) 武蔵野は今日は焼かないでください。愛しい夫も隠れていますし、わたしも隠れています。 と詠んだのを聞いて、女を取り戻して男と一緒に連れて行ってしまったのであった。 ある人の娘を盗み奪って 相思相愛の男女が駆け落ちのようなことをして、それを親が追ってきたというのが自然の解釈かと思います。 男は、女をおいて逃げてしまったのではなく、一旦草むらに隠して、あとで再び一緒になるということだと思います。 和歌(17) 「な~そ」は禁止。 女が詠んでますので、ここでは「つま」は夫。 この記事を書いている人 - WRITER - 雨野やたしげ フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」 前の記事 -Prev- 一寸法師のモデルの神様 次の記事 -Next- 伊勢物語-第十三段 武蔵鐙 関連記事 - Related Posts - 伊勢物語-第二十九段 花の賀 伊勢物語-第三十八段 恋といふ 伊勢物語-第十八段 白菊 伊勢物語-第百十八段 玉かづら 最新記事 - New Posts - 伊勢物語 あとがき 伊勢物語-第十八段 あきの夜も(伝 為氏本) 伊勢物語-第十七段 夢と知りせば(伝 為氏本) 伊勢物語-第十六段 太刀のをがはの(伝 為氏本)