伊勢物語-第百二十一段 梅壷

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男、梅壷より雨にぬれて、人のまかりいづるを見て、

和歌(203)

鶯の花をぬふてふ笠もがなぬるめる人に着せてかへさむ

 

返し、

和歌(204)

鶯の花をぬふてふ笠はいなおもひをつけよほしてかへさむ

 

(現代訳)

昔、男が宮中の後宮の梅壷から雨に濡れて、人が退出するのを見て、

和歌(203)

鶯が梅の花をぬって作るという花笠があればいいのに。濡れているご様子の貴女に、その花笠を着せてお帰ししたい。

 

返し、

和歌(204)

鶯が梅の花をぬって作るという花笠などいりません。それより貴方の思ひの火をつけてください。そうすればその火で着物を乾かし、私の感謝の思ひの火をお返しいたします。

  • 梅壷

宮中の後宮五舎の1つ、凝華舎ぎょうかしゃのこと。

中庭に梅の木があったことから。

 

  • 思ひ

「思ひ」の「ひ」と「火」を掛けている。

 

 

宮中の後宮の梅壷から雨に濡れて出てきた女に、男は梅の花笠を着せてあげたいと詠みました。

男のこの風流で心優しい歌に女の返歌は、まんざらでもない様子…

 

「思ひ」の「ひ」と「火」を掛けながら、甘えた様子でどこか誘惑するような歌を返しました。

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