伊勢物語-第百二十四段 我とひとしき人
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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。
日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
(原文)
むかし、男、いかなりけることを思ひける折にかよめる、
和歌(208)
思ふこといはでぞただにやみぬべき我とひとしき人しなければ
(現代訳)
昔、男が、どのようなことを思った時であろうか、こう詠んだ。
和歌(208)
心に思うことはいろいろとあるが、言わずにそのままにしておこう。私自身と同じ心を持つ人などいないのだから。
第一段で初冠を終えた少年も、いよいよ自身の人生の終焉を感じ、過去を振り返ります。
思い返せば…身分の貴賤を問わず、数々の女と恋をし、身分が高くても心卑しき女を軽蔑し、身分が低くても心に錦を持つ女に心を留めた。
権力闘争には、早々に敗れたが、同じく辛酸を舐めた皇子との友情、義父との絆、様々な人間模様の果てにたどりついた境地。
誤解を招いた言葉もあろう、修正したい、または説明を一言添えたい歌もあろう…しかしそれは所詮、私自身の感慨であり、真に理解できる人などこの世にはいないのだ。
それなら、いっそ何も語らず、すべてを胸にしまい、自身の人生を閉じよう…
百二十五段からなる『伊勢物語』の百二十四段目で男は、自身の人生を振り返りました。
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