伊勢物語-第五段 中空に(伝 為氏本)
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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。
日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
(原文)
昔、男、ある人に忍びてあひ通ひければ、かの男に、ある人、
和歌(7)
中空に立ちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりぬべきかな
(現代訳)
昔、男が、ある女と人目を忍んで逢い、通っていたところ、その男にその女が、
和歌(7)
空の中ほどに沸き立っている雲が跡形もなく消えてしまうように、私の身も消えて無くなりそうですよ。
男と女が逢瀬を重ねているが、それは人目を忍ばなくてはいけない関係なのでしょう。
そんな関係を続けることに、女が切なさ、不安といった感情を詠みましたが、男の返歌はありません。
第二十一段 おのが世々によく似た歌があります。
和歌(42)
中空にたちゐる雲のあともなく身のはかなくもなりにけるかな
この和歌(42)は、女が男と別れて拠り所がなく頼りないものになってしまった我が身を憂いたもので、
不安の種類が違いますが、どちらも「雲」がはかない我が身の象徴として詠まれています。
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