日の本の屋根裏から日本を考える

伊勢物語-第二十段 楓のもみぢ

 
伊勢物語







この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

(原文)

むかし、男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。

さてほど経て、宮仕へする人なりければ、帰り来る道に、やよひばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて、女のもとに、道よりいひやる。

和歌(34)

君がため手折れる枝は春ながらかくこそ秋のもみぢしにけれ

とてやりたりければ、返りごとは京に来着きてなむもて来たりける。

和歌(35)

いつのまにうつろふ色のつきぬらむ君が里には春なかるらし

 

(現代訳)

昔、男が大和に住む女を見て、求婚して情を通わせ、関係をもった。

 

そうして、しばらくして、男は宮仕えする人であったので、京へ戻ってくる途中の三月ごろに楓が紅に染まってたいそう綺麗なものを折って、大和の女のもとに、旅先の途中から歌を詠んでおくった。

和歌(34)

あなたのために折った枝は春でありながら、こうして秋と同じように深くもえるように紅葉しており、それはわたしのあなたに対する想いによるものです。

と歌を贈ったところ、返事はずいぶんと時を経た京に到着してから届いた。

和歌(35)

いつのまにあなたの心は、ほかの人の所に移り変わってしまったのでしょう。あなたの居られる里には、秋の季節ばかりがあり、春のような萌える喜びはないのでしょうね。

  • 男は宮仕えする人

京で宮仕えする男が、赴任先の大和で女を妻とし、京へ戻る際に女を連れて帰らないのだが、男が薄情というよりは、もともとそのような地方の妻を京へ連れて帰るという風習もなかった。

 

男が赴任先の大和から京へ戻る際、男は帰り途中に赤い楓の若葉を見つけ、大和の女に見せてやりたいと思って、歌を添えておくるが、女からのその返事は男が京に着いてから届くという非情に遅いものであり、男の心変わりをなじるような歌であり、男は失望を感じている。

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