日の本の屋根裏から日本を考える

伊勢物語-第三十三段 こもり江

 
伊勢物語







この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男、津の国むばらの郡に通ひける、女、このたびいきては、または来じと思へるけしきなれば、男、

和歌(66)
葦辺あしべより満ちくる潮のいやましに君に心を思ひますかな

 

返し、

和歌(67)

こもり江に思ふ心をいかでかは舟さすさおのさして知るべき

 

ゐなか人のことにては、よしやあしや。

 

(現代訳)

昔、男が摂津の国の莵原うばら郡に通っていたが、その女が、男が今度京へ帰ってしまったら、

次はもう来ないだろうと思っている様子であったので、男は、

和歌(66)
あしの生えている岸辺からひたひたと潮が満ちてくるように、わたしのあなたへの思いは増すばかりですよ。

 

これに対して、女の返し、

和歌(67)

深く入り込んだ人目につかない入り江のように、密かに深く思っているわたしの心を、舟を進めるさおが正しく指さるように、あなたははっきりと知ることができましょうか。

 

田舎の人の歌としては、いい出来であろうか、悪い出来であろうか。

  • 津の国むばらの郡

摂津国莵原うばら郡。現在の兵庫県芦屋市周辺。この地には業平の父阿保あぼ親王の領地があった。

この男は業平を意識して考えていることが分かる。

 

  • よしやあしや

あし」は、別名「よし」でもあるので、語呂を利かせて「よしやあしや」と結んでいる。

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