伊勢物語-第九十二段 棚なし小舟

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、恋しさに来つつかへれど、女に消息をだにえせでよめる。

和歌(166)

芦辺こぐ棚なし小舟をふねいくそたびゆきかへるらむしる人もなみ

 

(現代訳)

昔、男が、女への恋しさから会いたい思いで女のもとへ来ては帰るのだが、その女に便りを送ることもできずに詠んだ。

和歌(166)

芦が生える岸辺を棚板も無い小舟が、芦に隠されて人知れず行ったり来たりしているが、私の恋もまさに誰にも気付かることもなく、行っては帰るだけであろう。

  • 棚なし小舟をふね

棚板の無い小さな小舟。

 

「棚なし小舟をふね」の頼りない姿は、男の姿なのでしょう。

自信がなくどこか自虐的ですが、女の元を何度も訪れる誠実な男の姿が浮かんできます。

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