伊勢物語-第九十八段 梅の造り枝

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、太政大臣おほきおほいまうちぎみと聞こゆるおはしけり。

 

つかふまつる男、九月ながつきばかりに、梅の造り枝に雉をつけて奉るとて、

和歌(173)

わが頼む君がためにと折る花はときしもわかぬものにぞありける

 

とよみて奉りたりければ、いとかしこくをかしがりたまひて、使に禄たまへりけり。

 

(現代訳)

昔、太政大臣と申し上げる方がいらっしゃった。

 

つかえ申し上げる男が、九月頃、梅の造花の枝にきじをつけて献上するとのことで、

和歌(173)

私が頼りにする主君のためにと折った梅の花は、時節に関係なく咲いております。

 

と詠んで差し上げたので、大臣もたいそう興味をお持ちになり、使いの者に褒美を取らせた。

  • 太政大臣おほきおほいまうちぎみ

藤原良房のこと。

藤原良房の娘・明子あきらけいこは、文徳天皇との間に惟仁これひと親王をもうけ、惟仁これひと親王は、後に清和天皇として即位します。

これにより、業平と親しかった惟喬これたか親王の天皇としての即位の望みは完全に潰えます。

 

 

 

ときの太政大臣・藤原良房に梅の造花にきじを添えて献上した話です。

 

造花は、年中咲き誇っており、わが君の繁栄には時節など関係がないとゆう思いが込められています。

 

「和歌(173)」の「ときし●●も」には、「きし/きじ」が隠語として込められ、詠み手の機知が示されている。

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