日の本の屋根裏から日本を考える

伊勢物語-第二十二段 千夜を一夜

 
伊勢物語







この記事を書いている人 - WRITER -
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、はかなくて絶えにける仲なほや忘れざりけむ、女のもとより、

和歌(43)

憂きながら人をばえしも忘れねばかつ恨みつつなほぞ恋しき

 

といへりければ、「さればよ」といひて男、

和歌(44)

あひ見ては心ひとつをかはしまの水の流れて絶えじとぞ思ふ

 

とはいひけれど、その夜いにけり。

 

いにしへ、ゆくさきのことどもなどいひて、

和歌(45)

秋の夜の千夜(ちよ)を一夜(ひとよ)になずらへて八千夜(やちよ)し寝(ね)ばやあく時のあらむ

 

返し、

和歌(46)

秋の夜の千夜を一夜になせりともことば残りてとりや鳴きなむ

 

いにしへよりもあはれにてなむ通ひける。

 

(現代訳)

昔、そう深く愛情を交わさないままに別れてしまった男女がいたが、やはり、忘れられなかったのであろうか、女のところから、

和歌(43)

貴方のことをひどくつれない方だとは思いながらも、貴方を忘れることができないので、

一方では貴方のことを恨み、またもう一方では恋しくも思っているのです。

 

と言ってきたので、男は「そうだろう。思った通りだ」といって、

和歌(44)

お互いにいったん夫婦になったからには、心を一つにして、川の中洲で水が分かれ流れても、やがてまた合流するように、いつまでも仲絶えることがないようにしたいと思う。

 

と歌を詠んだが、すぐその夜に女のもとに行ったのであった。

 

過ぎた日のこと、将来のことを話して、

和歌(45)

長い秋の千夜を一夜と見たて、八千夜も共寝したならば、満足して夜が明けることがあるであろうか。

 

これに対して、女の返し、

和歌(46)

長い秋の千夜を一夜と見たてても、わたし達の愛の言葉を言い尽くすことができずに、夜明けを告げる鶏が鳴くことになるでしょう。

 

このようなやりとりの後、男は以前よりもさらに情感を抱き女のもとに通ったのであった。

  • 和歌(44)

「かはしま」は、「川島」と「交わし」を掛けている。

 

紆余曲折あり、結局は別れてしまった第二十一段とは違い、この第二十二段では最後は中睦まじく二人の関係は戻る。

 

別れてしまうか、元に戻るか、それは、ほんのちょっとした事をきっかけにしてどちらにも転んでしまう。

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