古事記を読む(131)中つ巻-初代・神武天皇

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

久米歌

神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことは、宇陀うだから、忍坂おさか(奈良県桜井市)の大室にお着きになりました。

すると尾の生えた土雲つちぐも八十建やそたけるが岩穴で待ち受けて、唸っていました。

神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことは、八十建やそたけるにご馳走を振舞うように命じました。

男たちにそれぞれ、膳夫かしわで(料理人)を付けて、その膳夫かしわでたちに太刀を持たせて、

膳夫かしわでたちに、

「歌が聴こえたら、一斉に切りかかれ」

と言いました。

そして、次の歌をお詠みになりました。

和歌(11)

忍坂の 大室屋に 人多に 来入り居り 人多に 入り居りとも みつみつし 久米の子が 頭椎い 石椎いもち 撃ちてし止まむ みつみつし 久米の子らが 頭椎い 石いもち 今撃たば良らし

忍坂おさかの大部屋に人がたくさん集まっている。
どれだけたくさんの人が入っていても、久米の子が剣や石斧を持って撃たずにおるものか。
久米の子が剣や石斧を持って、今こそ撃つ良いときだ。)

 

このように歌い、一気に土雲つちぐもたちを撃ち殺しました。

その後、登美毘古とみびこを撃とうとしたときにも、次の歌をお詠みになりました。

和歌(12)

みつみつし 久米の子等が 粟生には 臭韮一本 そねがもと そね芽つなぎて 撃ちてし止まむ

(久米の兵士たちの粟の畑には、臭いにらが1本生えている。
その臭いにらを芽も根もつなげて引き抜くように、そんな風に敵を撃ち取らずにおくものか。)

土雲つちぐも大和に従わない土着民。

八十建やそたける土雲つちぐもの屈強な男たち。

 

神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことは、八十建やそたけるに料理を振る舞うと見せ掛けて、その料理人たちに太刀を持たせて、歌を合図に斬りかかるよう命じます。

なかなかの汚い手ですが、古代は、こういった汚い手法が普通に使われています。

のちに出てきますが、英雄倭建命やまとたけるのみことも非常に汚い手を使って、敵を殺害します。

武士道精神が出てくるのは、もう少しあとのようです。

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