古事記を読む(181)中つ巻-第12代・景行天皇
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日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
倭建命の東征
景行天皇は、
倭建命に、
「東国の12ヶ国の荒ぶる神と従わない者どもを説得して平定せよ」
と命ぜられました。
このとき、景行天皇は、吉備臣の祖である御鉏友耳建日子を一緒に付けて遣わせ、比比羅木之八尋矛をお授けになりました。
倭建命は、景行天皇からの命令を受けて、東国へと向かう途中に伊勢神宮に参拝しました。
そして、その地にいた叔母の倭比売命に次のように仰せになりました。
「父・景行天皇は、わたしが死んだらよいと思っているのではないでしょうか。なぜ西の方の従わない悪人たちを撃って、帰ってきたばかりだというのに、すぐに軍勢も与えられないまま、また東の方の悪人たちを平定させるために遣わすのでしょうか。
やはり、わたしが死んだらよいと思っているのではないでしょうか」
このように申し上げ、倭建命が憂い泣いていると、倭比売命は、草薙の剣を授けました。
そして、袋を倭建命に渡し、
「もし、困ったことが起きたら、この袋を開けなさい」
と仰せになりました。
そして、尾張国に着いたとき、
尾張国造の祖である
美夜受比売の家にお入りになりました。
倭建命は、この
美夜受比売とすぐに結婚しようと考えましたが、東国を平定後、帰り上がるときに結婚しようと思い、
美夜受比売と婚約だけをして東国へ向かいました。
そして、山河の荒ぶる神々と従わない者たちをことごとく説得して平定しました。
比比羅木之八尋矛:柊で作った矛。邪気を払う力をもっている。
草薙の剣:須佐之男命が八岐大蛇の体内から取り出した剣。現在、三種の神器の1つになっている。
西国を平定して、帰ってきてすぐに、東国の平定を命じられた倭建命は、父・景行天皇の冷たさを感じ始め、叔母にその胸中を語りました。
しかし、恐らく、原因が何であるかは、分かっていないのではないかと思います。
そもそもの原因は、倭建命の兄である大碓命を倭建命が惨殺したことがきっかけです。
いずれ自分の地位を脅かす存在になると感じ、遠方に遠ざけ、東国の従わない者たちと相打ちしてくれるのが景行天皇が思い描く理想かもしれません。
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