古事記を読む(211)中つ巻-第15代・応神天皇

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

天之日矛あめのひほこ

昔、新羅の国王の子がいました。

名を天之日矛あめのひほこといいました。

この天之日矛あめのひほこが日本に渡って来たその理由は次のようなものです。

 

新羅に沼があり、その沼の名は阿具奴摩あぐぬまといいました。

この沼のほとりに、一人のいやしい女が昼寝をしていると、そこに日光が虹のように輝いて、その女の陰部を照らしました。

 

また、一人のいやしい男がいました。

その男は、この様子を奇妙に思い、その女のことを伺っていると、女は昼寝しているときに身籠もると、赤い玉を生みました。

これを見ていたいやしい男は、その赤い玉を頼んでもらい受けると、常に腰に付けていました。

 

この男は、田を谷間に作っていました。

その田を耕す人の食料を牛に乗せて谷に入ろうとすると、国王の子である天之日矛あめのひほこに会いました。

 

天之日矛あめのひほこは、その男に、

「どうしておまえは、食料を牛に乗せて谷に入ろうとするのか?おまえは、きっとこの牛を殺して食べるつまりであろう」

と言い、捕えて牢屋に入れようとしました。

 

これに対して、その男は、

「わたしは、牛を殺したりはしません。ただ田を耕す人の食料を運ぼうとしているだけです」

と言いましたが、天之日矛あめのひほこは、許しませんでした。

 

そこで男は、腰に付けていた玉を取り出して、天之日矛あめのひほこに贈りました。

天之日矛あめのひほこは、そのいやしい男を許し、その玉を持って帰るり床に置いていると、その玉は美しい少女になりました。

 

天之日矛あめのひほこは、その少女と結婚して妻としました。

 

その少女は、いつも様々な珍味を作っては、夫である天之日矛あめのひほこに食べさせましたが、天之日矛あめのひほこは、心がおごっていて、妻を罵るようになりました。

 

そして少女は、

「そもそも、わたしはあなたの妻になるべき女ではございません。わたしの祖国に帰ります」

と言い、密かに小船に乗って逃げ、日本の難波なにわ(大阪府大阪市)に着きました。

 

これは、難波なにわ比売碁曽社ひめこそのやしろに鎮座する阿加流比売神あかるひめのかみという女神です。

天之日矛あめのひほこ渡来人。神功じんぐう皇后の祖とされている。

 

この物語、いろいろな要素が盛りだくさんです。

いやしい男が田畑を持ち、労働者を雇っている?

新羅の国王の子である天之日矛あめのひほこが、貧しい国民にイチャモンをつけて、賄賂として「赤い玉」を受け取り、その赤い玉が少女に変わるとその少女を娶るが、その少女の料理に文句を付けて罵ると、その少女は祖国である日本に帰って行く。

 

当時の日本人は、朝鮮半島に良い印象をもっていなかったのかも知れない。

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