古事記を読む(219)下つ巻-第16代・仁徳天皇

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

石之日売命いわのひめのみこと

仁徳にんとく天皇は、大后おおきさきが山代から大和に上り進んだと聞いて、舎人とねりの名を鳥山とりやまという人をお使いになり次の歌をお送りになりました。

和歌(52)

山代に い及け鳥山 い及けい及け 我が愛し妻に い及き遇はむかも

(山代に早く追い付け鳥山、追い付け、追い付け、わたしの愛しい妻に、追いついて会ってくれ)

 

また続いて丸邇臣口子わにのおみのくちこを遣わして次の歌をお詠みになりました。

和歌(53)

御諸の その高城なる 大猪子が原 大猪子が 腹にある 肝向ふ 心をだにか 相思はずあらむ

(御諸山のその高い所の大猪子が原。その大猪子の腹にある心だけは、思い合っていたいものだ)

 

また次の歌をお詠みになりました。

和歌(54)

つぎねふ 山代女の 木鍬持ち 打ちし大根 根白の 白腕 枕かずけばこそ 知らずとも言はめ

(山代の女が木の鍬を持ち、耕して作った大根。その白い大根のような白い腕を枕にしていなかったのならば、わたしを知らないと言っても良いだろう)

 

このように口子臣くちこのおみが、この御製を詠むときに大雨が降りました。

 

しかし、口子臣くちこのおみは、雨を避けずに御殿の前に参上して平伏していると、大后おおきさきが入れ違いに御殿の後ろの戸にから出てしまい、

また、今度は、口子臣くちこのおみが、御殿後ろにに参上して平伏していると、大后おおきさきは、御殿の前から出てしまいました。

 

口子臣くちこのおみは、這って進んで庭の中央でひざまずいていると、庭にたまった雨水に腰まで浸かってしまいました。

 

口子臣くちこのおみは、紅色の紐がついた青色の服を着ていたので、庭にたまった雨水に紐の紅色が溶け出し、青い服がすべて紅色に変色してしまいました。

 

そのとき、口子臣くちこのおみの妹の口日売くちひめ大后おおきさきに仕えていました。

 

口日売くちひめが次の歌を詠みました。

和歌(55)

山代の 筒木の宮に 物申す 我が兄の君は 涙ぐましも

(山代の筒木の宮で殿で大后おおきさきに物申しているわたしの兄の姿は、涙ぐましいものである)

 

そこで、大后おおきさきがその理由をお尋ねになると、口日売くちひめは、

「わたしの兄が口子臣くちこのおみです」

と申し上げました。

和歌(53):原→腹→肝→心と歌のなかで連想させている。言葉遊びに近く、いまいち意味が分かりづらい。

 

この一連のやりとりと最後のくだりなんかは、物語になりそうな感じです。

史実というよりは、すでにあった何かの物語を引用している?感じです。

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