古事記を読む(227)下つ巻-第17代・履中天皇

 




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雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

水歯別命みずはわけのみこと曾婆加理そばかり

天皇が、大坂山の麓に到着したときに、一人の女に会いました。

その女は、

「武器を持ったたくさんの人たちがこの山を塞いでいます。當岐麻道たぎまちから廻って越えた方が良いでしょう」

 

そこで、天皇は、次の歌をお詠みになりました。

和歌(70)

大坂に 遭ふや乙女を 道問へば 直にはらず 當岐麻道たぎまちを 

(大坂で会った乙女に道を尋ねると、真っ直ぐにとは言わずに、當岐麻道たぎまちを通る回り道を行けと言う)

 

そして、當岐麻道たぎまちを上り進み、石上神宮いそのかみじんぐうにお着きになりました。

 

弟の水歯別命みずはわけのみこと(のちの反正天皇)が石上神宮いそのかみじんぐうに参上し拝謁はいえつを求めました。

 

天皇は、

「わたしは、あなたも墨江中王すみのえなかつみこと同じ心なのではないかと疑っている。だから語り合うまい」

と伝えさせました。

 

これに対して、水歯別命みずはわけのみことは、

「わたしには、邪心はありません。墨江中王すみのえなかつみこと同じではありません」

と申し上げると、

 

天皇は、

「それならば、今から帰り下り墨江中王すみのえなかつみこを殺して上って来なさい。そのとき、わたしは、必ずあなたと話し合うだろう」

と仰せになりました。

 

水歯別命みずはわけのみことは、難波に帰り下り、墨江中王すみのえなかつみこのそばに仕えている隼人はやひと曾婆加理そばかりを騙して言いました。

 

「もしおまえがわたしの言うことに従えば、わたしが天皇となり、おまえを大臣おおおみにして、天下を統治しようと思うがどうだ」

これに対して、曾婆加理そばかりは、

「仰せのままに」

と答えました。

 

水歯別命みずはわけのみことは、たくさんの報償をその隼人はやひとに与え、

「ならばおまえが仕えている墨江中王すみのえなかつみこを殺せ」

と言いました。

 

曾婆加理そばかりは、墨江中王すみのえなかつみこかわやに入るのをうかがい、矛で刺して殺しました。

和歌(70):真っ直ぐな道ではなく、わざわざ遠回りした道を教えるということは、意地悪ではない限り、それなりの理由があるわけです。この場合、當岐麻道たぎまちは、廻り道だけど起伏が少ないので、良いということ。

當岐麻道たぎまち奈良県葛城市當麻たいまを経て竹内峠に至る竹内街道。

 

裏切り者には鉄槌を。

墨江中王すみのえなかつみこは、御殿に火を付けて、履中りちゅう天皇の殺害を企てましたが、履中りちゅう天皇は、部下の機転で外に逃げ出して未遂に終わります。

無事逃げ出せて、めでたしめでたしでこの話は終わるのかと思いきや、間接的ですが、やはり鉄槌がくだされ、墨江中王すみのえなかつみこは、殺害されます。

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