日の本の屋根裏から日本を考える

古事記を読む(242)下つ巻-第21代・雄略天皇

 







この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

若日下部王わかくさかべのきみ

大后おおきさき日下くさか(東大阪市日下くさか)にいたとき、天皇は、日下くさか直越ただこえの道(大和から難波につながる道)から河内にお出ましになりました。

 

そのとき、山の上に登って国内をご覧になると堅魚木かつおぎを屋根の上に載せている家がありました。

 

天皇は、その家を尋ねさせ、

「その堅魚木かつおぎを載せているのは誰の家だ」

と問うと、

志機大県主しきのおおあがたぬしの家です」

と答えました。

 

これに対して、天皇は、

「このやっこめ。自分の家を天皇の御殿に似せて作るとはどういうことだ」

と仰せになり、

すぐに人を遣わせて、その家を焼かせようとしました。

 

そのとき、その大県主おおあがたぬしは、恐れて頭を地面に着けて、

「わたしは愚かでした。愚かさに気付かずに過度に作ってしまい、とても申し訳ありません。お詫びとして贈り物を献上いたします」

と申し上げました。

 

布を白い犬に掛け、鈴をつけて、腰佩こしはきという名の自分の一族のその犬の縄を取らせて、献上いたしました。

 

天皇は、火を付けるのを止めさせました。

 

そして、天皇は、若日下部王わかくさかべのきみの元へお出ましになり、

「これは、今日、道中で得た珍しいものである。これを結納の品としよう」

と伝えさせ、その犬を若日下部王わかくさかべのきみに贈り届けました。

 

これに対して、若日下部王わかくさかべのきみは、天皇に、

「天皇が日に背いてお出ましになるという事は、とても不吉なことです。ですから、わたしが直接宮中に参上してお仕えしましょう」

と申し上げました。

 

そこで、天皇は、宮にお帰りになる途中の山の坂の上に立って、次の歌をお詠みになりました。

和歌(83)

日下部の 此地の山と 畳薦たたみこも 平群の山の 此地此地の 山の峡に 立ち栄ゆる 葉広熊樫 本には いくみ竹生ひ 末辺には たしみ竹生ひ い組み竹 い組みは寝ず たしみ竹 たしにはい寝ず 後も組寝む その思い妻 あはれ

(日下部のこの山と平群の山と山との間に、立って茂っている葉の広い樫の木よ。その根元には笹が絡み、枝の先には竹が茂って重なっている。わたしたちは、その重なった竹のように重なり合って寝ることはないが、必ず一緒に重なり合って寝たいものだ。愛しい妻よ、ああ。)

 

天皇は、この歌を持たせて使者を若日下部王わかくさかべのきみの元に返しました。

堅魚木かつおぎ宮殿や神社の屋根につけた装飾具。

 

この堅魚木かつおぎの件も雄略ゆうりゃく天皇の横暴な一面が出ていると見ることもできますが、当時の時代背景としては、天皇と同等の家を作るというのは、あまりにも図に乗り過ぎたという感じもします。

 

和歌(83):意味が割と取りやすく、リズムが良い歌です。

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