2019/05/02

古事記を読む(238)下つ巻-第20代・安康天皇

 




この記事を書いている人 - WRITER -
雨野やたしげ
フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰を強く願う「自分たちの神話を学ばない民族に未来はない」。

大長谷王子おおはつせのみこの復讐

大長谷王子おおはつせのみこは、

軍を起こして、都夫良意富美つぶらおおみの家を囲みました。

このとき、都夫良意富美つぶらおおみも軍を起こして、待ち受けていて、戦いになりました。

射放つ矢があしのように一斉に飛んできました。

 

大長谷王子おおはつせのみこは、矛を杖にして、都夫良意富美つぶらおおみの家の中に向かって、

「わたしが言い交わした嬢子おとめは、この家にいるのか」

と尋ねました。

 

都夫良意富美つぶらおおみは、この言葉を聞くと、自ら参り出て、身に着けていた武器を解いて、8度拝んで言いました。

「先日、求婚なさった娘の訶良比売からひめはあなたに仕えさせましょう。

また五箇所の屯宅みやけ訶良比売からひめとともに献上しましょう。しかし、わたしが何故参上しないかと言うと、古くから現在に至るまで、臣下がみこの宮殿に隠れたという話は聞いたことがありますが、みこが臣下の家に隠れたという話は聞いたことがありません。

卑しい奴であるわたしごときが、力を尽くして戦っても勝つことはないでしょうが、自分を頼って我が家に逃げ入って来たみこを死んでも見捨てるわけにはいきません」

 

都夫良意富美つぶらおおみは、そう言うと、武器を取って、家に戻って戦いました。

 

しばらくして力尽き、矢も尽きたので、

「わたしは、手傷を負い、矢も尽きました。もう戦うことができませんが、どういたしましょう」

と、目弱王まよわのきみに尋ねると、

目弱王まよわのきみは、

「それならば、もうどうしようもない。わたしを殺しなさい」

と言いました。

 

そこで、都夫良意富美つぶらおおみは、刀で目弱王まよわのきみを刺し殺し、自分の首を切って死にました。

五箇所の屯宅みやけ現在の葛城の五村の苑人そのひと

苑人そのひと天皇への野菜などを作る人。

 

「臣下がみこの宮殿に隠れたという話は聞いたことがありますが、みこが臣下の家に隠れたという話は聞いたことがありません」

と言っていますが、

軽太子かるのひつぎのみこが、

大前小前宿禰大臣おおまえおまえのすくねのおおおみの家に逃げ込んだケースがあります。

参考:古事記を読む(232)下つ巻-第19代・允恭天皇

このときは、大前小前宿禰大臣おおまえおまえのすくねのおおおみは、軽太子かるのひつぎのみこを引き連れて現れて、相手側に差し出しています。

 

そう思うと、都夫良意富美つぶらおおみは、男気に溢れた忠義に厚い人物であることが分かります。

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