古事記を読む(248)下つ巻-第21代・雄略天皇

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

三重の采女うねめ

また、大后おおきさきが、次の歌をお詠みになりました。

和歌(93)

倭の この高市に 小高る 市の高処 新嘗屋に 生ひ立てる 葉広 斎つ真椿 そが葉の 広りいまし その花の 照りいます 高光る 日の御子に 豊御酒 奉らせ 事の 語り言も 是をば

(大和のこの高いところにある市の新嘗祭にいなめさいの御殿に生えている葉の広く茂った神聖な椿のその葉のように広くゆったりとして、その花のように照り輝いている日の御子に豊御酒を差し上げてください。このことを語ってお伝えいたします)

 

そして、天皇が次の歌をお詠みになりました。

和歌(94)

ももしきの 大宮人は 鶉鳥 領巾取り掛けて 鶺鴒せきれい 尾行き合え 庭雀 うず住まり居て 今日もかも 酒水漬くらし 高光る 日の宮人 事の 語り言も 是をば

(宮殿の人たちは、うずらのような白い模様の布を首に掛けて、鶺鴒せきれいが尾を動かすように、裾を引きずって行き合って庭の雀のように群れて今日も酒に飲まれている。日の宮の人たちよ、このことを語ってお伝えいたします)

 

この3首の歌は、天語歌あまがたりうたです。

 

天皇は、この豊楽とよのあかり(酒宴)で、三重の采女うねめをお誉めになって、多くの褒美を与えました。

采女うねめは、大御盞おおみさかずきに葉が落ちて浮かんでいることに気付かず、その大御酒おおみきを天皇に差し出して、殺されかけたところで、機転を利かせた歌を詠み、許されましたが、許されるどころか、さらに前進して、多くの褒美を賜りました。

殺されかけて、機転を利かせ、許される。

この流れは、よくあるかもしれませんが、さらに褒美まで貰うというこの180度違う事態に変換させることは、あまり無いような気がします。

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