古事記を読む(252)下つ巻-第22代・清寧天皇
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日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
皇位の譲り合い
顕宗天皇が、天下を統治なさろうとするとき、
平群臣の祖である
志毘臣が歌垣に立ち、
袁祁命が求婚しようとしていた
美人の手を取りました。
その嬢子は、菟田首の娘であり、名を大魚といいます。
そこで、袁祁命も歌垣に立ち、志毘臣が、次の歌を詠みました。
(宮殿のあちらの隅が傾いている)
このように詠んで、その歌の続きを求めたところ、袁祁命は、次の歌を詠みました。
(大工の棟梁が下手だから、隅が傾いたのだ)
志毘臣が、また次の歌を詠みました。
和歌(99)
大君の 心を緩み 臣の子の 八重の柴垣 入り立たずあり
(大君の心が緩んでいるから、臣下の者の家の八重の柴垣に入ってこれないのです)
そこで、王子が、また次の歌を詠みました。
和歌(100)
潮瀬の 波折りを見れば 遊び来る 鮪が端手に 妻立てり見ゆ
(潮瀬で波が崩れるのを見ていると、泳いで来た鮪(マグロ)のひれに妻が立っているのが見える)
そこで、志毘臣は、いよいよ怒って次の歌を詠みました。
和歌(101)
大君の 王子の柴垣 八節結り 結りもとほし 切れむ柴垣 焼けむ柴垣
(大君の王子の柴垣は、たくさんの結び目で締められて、しっかりと締められているが、切れる柴垣だ。焼けてしまう柴垣だ)
そこで、王子が、また次の歌を詠みました。
和歌(102)
大魚よし 鮪突く海人よ 其が離れば うら恋しけむ 鮪突く志毘
(大きな魚である鮪を突く海人よ。それが遠く離れていけば、うら恋しいであろう。鮪を突く志毘よ)
このように詠うと、夜を明かして、それぞれ、その場から退きました。
志毘臣は、
袁祁命が求婚しようとしていた
大魚の手を取り、
袁祁命に対して、かなり挑発的な歌を詠いました。
要は、大魚を取り合っています。
志毘臣「おまえの家傾いているな」
袁祁命「大工の腕が悪いからだ」
志毘臣「おまえのとこのトップの心が緩んでるからだろ」
袁祁命「マグロのひれに乗って彼女(
大魚)がわたしの所に来てくれた」
志毘臣「おまえのとこの柴垣は切れて焼けてしまうちんけなものだ」
袁祁命「
志毘よ。彼女(
大魚)が乗ったマグロが遠く離れてしまってはうら恋しいだろ」
儀式の一環としてなのか・・・どこまで本気か分かりませんが、いずれにせよ1人の女性を巡って歌のやり取りを行いました。
まぁ、しかし志毘臣は、この後、意祁命と袁祁命に殺害されてしまいますので、本気のやり取りだったのかもしれません。
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