2019/07/21

暑過ぎ・・・なので、涼みがてらの不思議な体験話

 




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闇で遊ぶ子ども

20代の頃、ある店舗で働いていたことがあった。

基本的には、お酒を担当することが多く、フォークリフトに乗ったり、トラックを運転したりと、今では考えられないハードワークをこなしていた。

その店舗は、2階建てで、1階が売り場、2階が在庫置き場となっていた。

 

営業中、われわれ従業員は、天井を見上げることがよくあった。

 

それは、子どもの走り回る足音が2階から聞こえてくるから・・・

お客さんにも聞こえていたであろうが、気にとめる人はいない。

 

一見、日常のその「子どもの走り回る足音」は、2階が在庫置き場で走り回るような空間もなく、まして走り回る人物などいないことを知っているわれわれ従業員にのみ強烈な違和感を与えた。

しかも、事務所は、2階の隅に設けられており、

夜の22時に営業を終え、アルバイトを帰らせて売り上げ等の事務処理を済ませて行くのだが、シフトの関係上ラストの22時まで残る社員は、だいたい1人となっていた。

 

電気を点けるのは、基本事務所内のみである。

事務処理を終えると、よせば良いのに、ふと事務所の開け放たれた窓から2階の暗闇を凝視する

しかし、何も見えない・・・

そして、何も聞こえない・・・

棚卸し

本社から22時の営業終了後、棚卸しを夜通しで行い、そのまま翌日の営業をするようお達しが下る。

おぉ、なんというブラック・・・恐ろしい・・・

いや、本当の恐怖は、ここではない。

5時間はかかる棚卸しを社員数名で夜中から行う。

 

ここで一晩過ごすのか・・・

 

そして、棚卸しを始めて数時間後、営業外の静かな1階フロアに2階を走り回る足音が響き渡る。

 

営業中に聞こえる比ではない・・・

 

社員一同顔を合わせ、

「ヤバいね・・・」

棚卸しを終えても誰も2階に上がろうとしない・・・笑

営業までの間、皆1階フロアに倒れるように寝転び、夜が明けるのを待った。

ある電話

棚卸しから数ヶ月後、営業中に電話が鳴った。

わたしが電話に出ると、電話主は、開口一番にこう言った。

「こちらの番号から着信があったので、掛け直したのですが・・・」

電話主は、恐らく、30代、40代くらいの女性の方であろう。

 

他の従業員が電話を掛けたのかと思い、着信日と時間を訊く。

「今日の夜中の3時過ぎです」

・・・

・・・

背筋が冷たくなる・・・

昨日の営業後、1人残って事務処理をして、セコムをかけて店を出たのはわたしである。

その後、誰かが入ろうものなら、セコムが鳴り響きセコム社員が駆けつけて、必ず連絡が来るはずである。

こちらが店舗であることとセコムの旨を丁寧に説明し、あり得ないと思いつつお住まいの場所を訊く。

「青森です」

いや・・・
あり得ない・・・

他の従業員がお客さんに掛けたという前提の距離ではない。

 

こちらが関西であることを伝え、他の従業員に確認してから折り返し電話を掛け直す旨を伝え電話を切る。

念のため、従業員に確認するが、もちろん誰も掛けていない・・・

折り返し

先ほど訊いた電話番号に折り返そうと受話器を握る。

そこで、確認し忘れていたものに気付く。

 

発信履歴・・・

 

恐る恐る発信履歴を見る。

・・・

・・・

・・・

・・・

今度は、背筋が凍結する。

 

今日の日付の3時過ぎの発信履歴が・・・

 

確かにある。

・・・

・・・

・・・

これは説明がつかないと思いつつ、ありのままを話すしかないと折り返す。

従業員は、誰も掛けていないが発信履歴としては、仰る通り残っている旨を話す。

 

この手のことはあまりないかも知れないが、わたしが電話主であったら、特に実害も受けていない訳なので、不思議と思いつつも、これ以上話しようがないと引き、電話を切ると思う・・・

が、

しかし、電話主は一向に引く気配がなく、同じ様な問答を十数分間繰り返す。

 

こちらは、もう説明しようがない訳で、一応謝罪はするものの電話主が引いてくれない限りは、電話を切ることが出来ない。

中学生の恋愛のような何か言いたいことがあるのは、有り有りと伝わるのだが、本題を切り出せずに終始他愛もない会話を繰り返すような・・・

そんなまったりと気怠けだるい時間。

中学生の恋愛なら、そんなときの相手の気持ちは往々にして分かるものであり、それに対する返事はさておき、とりあえず合いの手を差し伸べることはできるが、このときは、このご婦人が何を言いたいのかが本当に分からなかった。

まぁ、分かる訳ないのだが、

 

しかし、間違いなく何か言いたいことがある・・・

 

その気配だけはかもしている。

そして・・・

その後、相変わらず同じ問答を繰り返した後、

電話主がようやく重い口を開く。

・・・

・・・

・・・

「・・・わたしには、子どもがいたんです・・・数年前に行方不明になってしまって。いまちょうど小学校2年生かしら。もしかしたら、その子から連絡があったのかなと思って・・・手掛かりなんかを聞けるかもと思い・・・ついつい・・・」

「・・・そうですか・・・」

 

子ども・・・

思わず1階の天井を見上げる・・・

まさか・・・

物理的に夜中の3時に発信履歴を残せるのは、「あの」子どもしかいない・・・

しかし、あれは、まごうことなく、この世のものではない。

 

関西と青森・・・

確証もない・・・

子の帰りを信じて待つ親に、仮であっても、その子は、もうこの世にはいないという前提で話をするのか・・・

 

逡巡しゅんじゅんした挙句あげく、何も伝えず電話を切った。

 

この判断が正しかったのかは、分からない・・・

あの発信履歴だけは、今も本当に説明がつかない。

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