古事記を読む(239)下つ巻-第20代・安康天皇
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日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。
古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」
市辺忍歯王
この後、淡海の佐佐紀山君の祖である韓袋という名の者が言いました。
「淡海の久多綿之蚊屋野に多くのの猪や鹿がいます。その足は荻原のようで、角は、枯松のようです」
このとき、大長谷王子は、
市辺忍歯王と一緒に
淡海に出掛けて、その野に到着すると、それぞれ違う
仮宮を作って宿としました。
翌朝、まだ日が出ていないときに忍歯王は、いつも通りの何気ない様子で馬に乗りながら、大長谷王子の仮宮の傍に来て、大長谷王子の御家来に、
「まだお目覚めにならないのか。早くこう申し上げよ。夜はすでに明けました。狩り場に行きましょう」
と言いました。
そして、すぐに馬を進めて先に行ったので、大長谷王子の御所に仕えている家来たちは、
「不愉快な物言いをする王です。用心して、武装なさるべきです」
と申し上げました。
これに対して、大長谷王子は、
衣の中に甲を着て、弓矢を携え、馬に乗り出て行って、たちまちの間に忍歯王に追いついて並ぶと、矢を抜いて忍歯王を射落として、その身を切り、飼葉桶に入れて、地面の高さにして埋めました。
早速、後世に「大だ悪しき天皇」という不名誉な評判を頂戴する大長谷王子(のちの雄略天皇)が殺戮を行いました。
しかも殺された忍歯王の扱いは、「地面と同じ高さで埋められた」とあります。つまり、普通は、墓や塚などを築いて、地面より高い位置に遺体を安置しますが、そうではなく雑な扱いで葬られたことを意味します。
忍歯王は、
大長谷王子の
従兄弟に当たりますから、立派な天皇家の
王ですが、あまりにひどい扱いを受けていることが分かります。
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