伊勢物語-第百十段 魂結び

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男、みそかに通ふ女ありけり。

 

それがもとより、「今宵夢になむ見え給ひつる」といへりければ、男、

和歌(189)

思ひあまりいでにしたまのあるならむ夜ぶかく見えばたま結びせよ

 

(現代訳)

昔、男がひそかに通う女がいた。

 

その女の所から「今晩、私の夢に貴方がお見えになりました」と言って来たので、男は次のように詠んだ。

和歌(189)

貴女を思うあまり、体を抜け出して魂が貴女のもとへ行ったのでしょう。また夜が更けてから夢を見たなら魂を結びとめるたま結びのおまじないをしておいてください。

古代の考え方では、ある人を思い詰めると自分の魂が抜け出して相手のところへ行き、相手の夢へ現れるといった考え。

 

現代の、眠るときに相手のことを思い詰めたからこそ、自らの夢に相手が出てきたという考えとは、少し違和感があります。

 

逆に言えば、古代的な考えでは、夢に出てきて欲しいと思っているのに、一向に愛しい人が出てきてくれないのは…

相手が自分のことを思っていないということです。

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