伊勢物語-第六十八段 住吉の浜

 
伊勢物語







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

(原文)

むかし、男、和泉の国へいきけり。

 

住吉の郡、住吉の里、住吉の浜をゆくに、いとおもしろければ、おりゐつつゆく。

 

ある人、「住吉の浜とよめ」といふ。

 

和歌(125)

雁鳴きて菊の花さく秋はあれど春の海辺にすみよしの浜

 

とよめりければ、みな人々よまずなりにけり。

 

(現代訳)

昔、男が和泉の国へ行った。

 

住吉の郡、住吉の里、住吉の浜を行くと、たいそう景色が心地よいので、馬から降りて腰をおろして景色を眺めながら旅した。

 

ある人が「『住吉の浜』を入れて歌を詠め」という。

 

和歌(125)

雁が鳴いて菊の花が咲く秋の住吉も褒められるだけのことはあるが、春のこの住吉の浜は、景色はもちろんのこと、住みよい場所だ。

 

と詠んだので、ほかの人々は感銘を受けて詠まなくなってしまった。

  • 和泉の国

今の大阪府南西部

 

第六十六段、第六十七段、第六十八段と続く摂津から和泉国、河内、伊勢までの旅で、秀歌とともに各地の素晴らしい景色を紹介している。

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