古事記を読む(68)上つ巻-大国主神

 







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フリーの翻訳者・ライター、編集、校正。 日本の伝統文化である和歌、短歌、古典、古事記、日本文化、少しのプライベート。 古事記の教育現場復帰「未来を担う子ども達に自分たちのアイデンティティである日本神話を」

八千矛神やちほこのかみ

須勢理毘売すせりびめは、

和歌(6)
八千矛やちほこの 神のみことや 吾が大国主おおくにぬし 汝こそは 男にいませば 打ち廻る 島の崎々 かき廻る 磯の崎落ちず 若草の 妻持たせらめ 吾はもよ 女にしあれば 汝を除て 男は無し 汝を除て 夫は無し 綾垣の ふはやが下に 苧衾むしぶすま 柔やが下に 栲衾たくぶすま 騒ぐが下に 沫雪あわゆきの 若やる胸を 栲綱たくづのの 白き腕 そだたき たたきまながり 真玉手またまで 玉手さし枕き 股長に 寝をし寝せ 豊御酒どよみき 奉らせ

八千矛神やちほこのかみよ。我が大国主おおくにぬしよ。あなたは男でいらっしゃいますから、廻る島の岬ごとに、廻る磯の岬ごとに若草のような妻がおられることでしょう。しかし、わたしは女ですから、あなたのほかに男は居ません。あなたのほかに夫は居ません。綾織の帳あやおりのとばりのふんわりと揺れる下で、カラムシの布団の柔らかな下で、こうぞの布団のざわざわと鳴る下で、泡雪のような若い胸を、白い栲綱たくづののような腕を愛撫あいぶし、抱擁したりして、玉のようなわたしの手を枕にして、足も伸び伸びとさせてお休みになさいませ。さぁ、このお酒をお召し上がりください。)

 

と歌をお詠みになりました。

そして、さかずきを交わし、夫婦のちぎりを結び誓い合い、互いに首に手を掛け合って、今に至るまで鎮座しています。

これを神語かみがたりといいます。

和歌(5)で、出雲から大和に旅立つのに黒い服より、青い服より、藍色の服が似合うなぁと言っていた大国主神おおくにぬしのかみですが、この須勢理毘売すせりびめの引き止めの歌を受けて、一転、出雲に残ることにしました。

そして、大国主神おおくにぬしのかみは、出雲に鎮座することになりました。

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